世代論の使い方

日本では、例えば、就職氷河期世代だから○○、団塊世代だから○○、平成世代だから○○といった世代論をよく耳にします。特に明治維新以後、世代ごとに区切れるほどわが国の情勢が大きく変化してきたこともあり、我々はこういう議論や分析が本質的に好きなのだと感じます。そして、このような世代論は確かに日本の大きな時代の変化を捉える上で意味のあることだと思います。

少子高齢化や平成から令和への改元もあって最近いっそう世代論を聞くことが増えている気がします。時代の分析として有用と思う一方で、個々の人を色づけるような世代論の使用法、例えば、彼は就職氷河期世代だからこんなことをしたのだとか、団塊世代だからこんなことを言うのだといった議論は、個々のケースの具体的な背景や真の意味から目をそらされてしまうような危険を感じます。少なくとも、こういう議論を過剰な一般化だと警戒する意識はあった方がよい気がします。

弁護士業は人と人が対立する場面に遭遇してばかりですが、人や事件を正しく理解する能力だけはいつまでも研鑽を続けなければと日々思います。

林 康司