改正民法(4月1日施行)はどこから適用されるか(1)

2020年4月1日以降の更新合意

上で述べたとおり、旧民法・新民法のどちらが適用されるかは、契約日が2020年4月1日より前か後かという契約日基準によります。では、2020年4月1日より前に締結された契約が、2020年4月1日以降に更新された場合はどうなるのでしょうか。

附則は、契約日基準の例外として、新民法604条2項(賃貸借の更新後の存続期間を最長50年間まで認める規定)は、2020年4月1日以後に更新合意がされるときにも適用されると規定しています(附則34条2項)。附則34条2項が、特定の条項について更新合意への新民法の適用を特に規定していることから、これを素朴に反対解釈すると、2020年4月1日以後に更新合意がされても、原則として旧民法が適用されるかのように思われます。

しかし、2020年4月1日以後に更新合意がなされる場合、当事者は通常、新民法の適用を予測しているはずですので、むしろ新民法が適用されると考える方がしっくりきます。

法務省も同じ理解で、上の例2で述べた賃貸借契約の例で、更新合意がされた場合の旧民法・新民法の適用について、以下の見解を示しています。
・4月1日以降に賃貸借契約や保証契約について更新合意がなされたときは、当事者はその契約に新民法が適用されることを予測しているため、新民法が適用される。
・4月1日以降に賃貸借契約については更新合意がなされたが、保証契約については更新合意がなされなかった場合、保証契約が賃貸借契約の更新後に発生する債務も保証する趣旨で当初の保証契約が継続している場合には(通常そう解釈されると思われます)、当該保証契約については4月1日後も旧民法が適用される。

つまり、法務省は「当事者が新民法の適用を予測しているか」という基準で判断するとしており、この考えによれば、2020年4月1日以降の更新合意には新民法が基本的に適用されることになります。

なお、新民法では極度額の定めがない個人根保証契約は無効です(465条の2第2項)。このため、上記の法務省見解を前提にすると、更新合意書に賃借人だけでなく保証人も署名等する場合は保証契約に新民法が適用されるので極度額の定めが必要となり、他方、更新合意書に保証人が署名等せず、更新前契約についての保証契約が継続する場合には旧民法が適用されるので極度額の定めは不要ということが帰結されます。パズル的な思考が必要になるので注意が必要です。

基本契約、個別契約

企業間で売買のような取引が継続的になされる場合、基本契約をまず締結し、以後、この基本契約に基づき個別契約を締結するという形で取引がなされることが少なくありません。

それでは、2020年4月1日より前に売買基本契約書のような基本契約が締結され、2020年4月1日以降に基本契約に基づいて個別契約が締結された場合、旧民法・新民法はどのように適用されるのでしょうか。旧民法・新民法で瑕疵担保責任などの用語の意味が異なる可能性もあるので、この問題は意外と重要です。

更新合意と同様に考えて、2020年4月1日以降に個別契約を締結する場合、「当事者は新民法の適用を予測している」といえるから、新民法が適用されるという考えがまずありえます。

その一方で、個別契約はあくまで基本契約の上に成り立つものであるから、2020年4月1日以降の個別契約についても基本契約と同様、旧民法が適用されるという考えもありえます。

難問ですが、少なくとも個別契約の実質的な約定の大部分が基本契約で規律されているような場合には、基本契約との密接関連性から、当事者は旧民法の適用を予測しているといえ、基本契約・個別契約とも旧民法が適用されると解するのが当事者の意思に合致すると考えられます。

ただ、その場合も、時効の問題などについては新民法が適用される可能性があります(この記事の続編(⇒リンク)の時効に関する説明をご覧になって考えてみて下さい)。附則が採用している新旧民法の適用を分ける基準がそれぞれどのように適用されるかについては微妙な問題が生じる可能性があります。不安であれば、基本契約を新民法に準拠して締結し直すべきです。

また、基本契約には自動更新条項(当事者から反対の意思が表示されない限り契約は自動で更新されるという趣旨の条項)が規定されることが少なくありません。このような自動更新条項に基づく更新後の基本契約には旧民法・新民法のいずれが適用されるのでしょうか。積極的に更新合意した場合と違い、「更新に反対の意思を表示しなかった」ことをもって、「当事者は新民法の適用を予測している」とまでいえるかという問題ですが、難しい問題です。疑義を解消するため、2020年4月1日以降の更新の際に、基本契約を新民法に準拠して締結し直してくださいとアドバイスしたくなります。